イラスト・ノート

イラスト描き、山田唄の制作物を載せて行きます

初級者向け講座9「キャラデザ記憶術、部品のストックの仕方」

 こんばんは。今夜も徹夜で作業しております。それにしても最近本当に暑いですね。すでにエアコンのお世話になってしまっております。今年は節電など厳しく言われそうですが、気温がどんどん上がり続けているのでどうなるか…。

 今回は、前回に引き続きキャラクターデザインの私的ノウハウについて触れて行こうと思います。

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 キャラクターデザイン、と言う時、多くの人は「これまでにない新しい発想、造形、色彩でキャラを作らなくては」と思われるのではないかなと思います。実際、AというゲームのキャラとBという別のタイトルのゲームキャラが大きく被っていると、大変問題があるのですが、ぶっちゃけ何もかも新しいデザインと言うのは現代においてほぼ生まれ得ません。

 先人が残してきた膨大なモチーフの一つにも被らないということが恐らく出来ないだろうという意味において、です。そこで、必ずと言っていいほど必要になるのが、先人の真似をしつつ上手く自分の味に転化して行く技術になります。

 料理に例えると、カレーを作る時、甘口であれ少しは辛くなければおよそカレーとは呼べないですよね。でも、今の世の中には野菜カレーやカツカレー、ホワイトカレーグリーンカレーなんていうものまで存在します。あれらは、カレーという元々の料理に一味加えて全く別の料理に変えてしまった例です。それと同じ事がデザインの世界でも求められるんですね。

 

 実際、私もアナログ時代からたくさんの絵描き様の絵柄やデザインのパーツを真似てキャラデザの勉強をして参りました。以前ご紹介したキム・ヒョンテ様の画集に出会ったときなど、半年くらいはその模写に費やしてエッセンスを盗み取りました。

 現在も、ごく頻繁に画像検索で様々なデザインを探しては、部分的に取り入れさせて頂くことがよくあります。

 それら、「部品の集め方」が上手い絵描き様ほど、より柔軟に絵を描く能力にも長けていると言えるのではないかなと思います。

 

 そうでなくとも、アイディアなど出るときは出るものですが、出ないときは全くと言っていいほど出ません。そこで、部品を思いついたときにストックし、自分の中に溜めて行く作業が必要になります。

 多くのキャラデザイン系の絵描き様は、メモ帳やアイディアノートといったものを所持しており、思いついたアイディアをスケッチして纏めて行くという方法を取っていらっしゃいます。いわゆるネタ帳ですね。スケッチに加え、メモなどを付けて整理して行く事で、簡易の自分用キャラデザイン辞典が出来上がります。

 

 ただ、私は実はネタ帳は全く作っておりません。携帯やパソコンにメモを残すこともほとんど致しません。ここからは、ちょっと画像を載せつつ、私なりのアイディアのストックの仕方、纏め方について述べてみます。

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 一、「キーワード検索型の記憶構造を作る」

 

 結構うさんくさい話になるのですが、私はキャラデザの際、頭の中から様々なアイディアを瞬時に再生させられる記憶構造を作ることを心掛けて来ました。頭の中にネタ帳を移植してしまったわけです。無茶なことを言っているように聞こえるかもしれませんが、人間の脳というものは半分以上が眠っているにも関わらず、機能している部分だけでもコンピュータ数万台に匹敵するほどの記憶容量を持ちます。そして、コンピュータに比べて遥かに高速に記憶を引き出すことも出来る。その便利な記憶媒体をフルに使ってやろうと言うわけです。

 

 近年、人工知能の研究が進み、人間の思考回路の構造というものが徐々に明らかになってきました。それによれば、人間の脳には記憶を蓄える無数の端末である細胞と、それを繋ぐシナプス樹状突起などと呼ばれる神経細胞が存在します。細胞間を行き来する神経信号の働きにより、それらは情報のやり取りを行い、脳全体として一つの思考を行います。

 つまり、記憶同士が神経で繋がり、網目のような構造を作りだしているのが人間の脳であるわけです。

 これを利用して、昨今とても高性能な人工知能が作られました。それが実現した方法は包括的思考と呼ばれるもので、例えば「今晩の夕食」というキーセンテンスに対して、それに繋がる「夜」「今日」「食事」「夕方」などの下位互換にあたるキーワードを呼び出し、そのそれぞれ、例えば夜というキーワードに対してさらに「遅い」「時間」「暗い」などの下位互換のキーワードを呼び出す、という構造を繰り返して、最終的に元の「今晩の夕食」という言葉を理解する、という思考構造です。例えるならば、言葉について延々国語辞典を引いて行き、その言葉で全体を理解するわけです。しかし、国語辞典よりもはるかに優れている点として、言葉だけではなく映像や音声、匂いや手触りに関する記憶なども辿って繋げていくことが出来るのが脳の強味です。

 

 これ、受験勉強などにも有効な手段となり得るのですが、早い話が記憶を別の記憶と結びつけてすぐに呼び出せるようにすれば、衣装や武具、装飾具のような複雑な構造のものについても整理、理解でき、そしてすぐに参照できる、という事になります。

 そこで、私が始めた記憶法は、とにかく短くて直感的な名前を自分の見聞きしたデザインのパーツそれぞれに付ける、というものでした。

 例えばボトムズに関して言えば、「スカート」「ズボン」「パンツ」の三つに大きく分類出来ます。その「スカート」をさらにロング、ショート、ベリーショート、の三つに分ける。この時、イメージの手助けとなるような情報も関連付けます。ロングであれば「重い」「淑やか」、ショートであれば「軽い」「大胆」などです。これにより、例えば女子高生を描きたい時、淑やかな性格にしよう、或いはギャル風の大胆な性格にしよう、と考えた時、瞬時にロングやショートなどの適切な情報が呼び出されるわけです。

 

 では、関連付けて記憶するためにはどうすれば良いのか。

 実は結構単純で、一度考えれば良いだけなんですよね。出来れば視覚や聴覚といった五感に訴えられるよう、絵を描きながら、あるいは考えたことを声に出して纏めたり、メモ帳やネットのブログなどに纏めて行くと大変有効かと思います。一度関連付けた情報の間には、先ほど申しました神経回路が生成され、よほど放置しない限り幾らでも思い出せるようになります。

 そもそもがメモの役割と言うのは、昔から見直して思い出すことではなく文字にすることで忘れないようにすること、でした。それは絵に関しても応用できるわけですね。

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二、「単純なパターンを組み合わせて纏める」

 

 さらに私の記憶法について解説して参ります。私のしているキャラデザは、前回とは違った雰囲気を毎回出し、目新しいものにしているつもりなのですが、実は基本となる構造は数種類ほどの、ごく少なく且単純なものです。

 簡単に自分のデザインの基本形を書き出してみましょうか。

 

男性←→女性

  ー鎧  -フルプレート、部分鎧、皮鎧

  ー布服 -シャツ、ズボン、スカート、コート、ソックス、タイツ

  ―筋肉 -腕、足、胴体

  ―履物 -スニーカー、下駄、ブーツ、ロングブーツ、ヒール

  ―装飾 -帽子、フリル、ボタン、ジッパー、髪留め

  ―武器 -剣、銃、盾

  ―異形 -腕、足、尻尾、牙、角、翼

 

 ざっくり纏めると本当にこれくらいです。しかし、これだけの要素があれば、組み合わせだけでも十分に被らないだけのパターンを作ることが出来ます。それに加え、それぞれの要素やキャラで色を変えたり、細かい造型を変化させることで無限の引き出しを持つように見せかけているわけです。

 さらには、細かい造型の変化のさせ方についても分類して記憶しています。それは主に形の記憶になるのですが、

 

単純図形-十字、三角、四角、丸

パターン-網目、ストライプ、市松模様

質感  -堅い、柔らかい、無形

 

 くらいの、ごく単純なものです。

 すべてはこれらの組み合わせで出力しています。頭の中に明確なイメージがあるわけでは無く、画面で作って行く描き方が多いですね。厚塗りに有利な構築方法と言えそうです。

 

 とても長くなってしまったので今回はここまで。次回は「纏め方」の部分に特にフォーカスして、どうすれば様々なパーツを違和感なく纏められるかという点に触れられると良いなと思います。

 

 では、また次回。

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