イラスト・ノート

イラスト描き、山田唄の制作物を載せて行きます

デフォルメの美学

 こんにちは。徐々に正月疲れが出始める時期になって来ました。私も例にもれずややお疲れ気味でございます。正月はごろごろしていた筈ですのにおかしいですね…。

 今回は、デザインに絡めたデフォルメのお話を。

 

 先日ちらっと触れましたが、デフォルメとは「単純化」のことを指します。絵に於いては、人物や動物、人工物などのディテール(構造)を省略またはアレンジして描くこと、ですね。特にイラストレーションでは人物画を描くときの絵柄そのものを指すことが多いです。コミックアートなどはデフォルメの代表格と言えるでしょう。

 今回この話をするのは、デフォルメの技術がデザイナーにとって大変重要になってくるからです。

 

 先日も申しましたように、デザイナーの仕事はそれ単品で完結するものではなく、ゲームなら一つのタイトル、インテリアなら一つの部屋、などのグループに属しての作業になることがほとんどです。

 そこで、デザインの内容だけでなく絵柄もその時々によって柔軟に変えて行かなくてはならない。なぜなら、例えば六頭身の人物と二頭身のデフォルメされたちびキャラとでは、似合う服、映える髪形などが変わってくるためです。

 

 私自身が大変不得手としているのがこのデフォルメの理屈でもあります。

 あらゆるデフォルメに対応するということは、自分の絵柄や癖を捨てるということ。アニメーターやデザイナーには必須のスキルなのですが、これがなかなか難しい上に気分の上でもあまり気持ちイイとは言えません。捨てるにあたって自分の絵柄をけちょんけちょんに否定して行くことになるからです。

 もちろん、実際には否定しているのではないですし、否定だと思っていると尚更やり辛いのですが…。

 そんな理由があり、私は一つの絵柄だけでここまで描いて参りました。そろそろ方向転換の必要を感じていたりします。

 

 さて、ここまでではあまり内容が無かったので、ここからいつも通り私のペースでのお話になります。デザインに於いてのデフォルメの役割は大体今述べました通りなのですが、もう一つ、「現実の形態をデザインに落とし込む」イメージの継承の際に用いる技術としての側面がございます。

 例えば、人物の髪形を考えると分かり易いかもしれません。アニメや漫画などでは、しばしば現実では有り得ないような髪型が登場します。それは、シルエットで一目でこれと分かるようキャラクターを印象付けるために、大げさに髪形をデフォルメしているから。そのように、デフォルメにはデザインをより効果的に見せるために大げさなものに変える、という一面もあります。

 ここで例を挙げて行きましょう。

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 上のイラストは、一昨年私が描いた習作になります。一目見て、現実に有り得ないデザインが多々用いられていることが分かります。

 まず、デザインの代表格としての体格のデフォルメ。男性の力強さが伝わるように、筋肉を大げさに表現してありますね。そして、その筋肉をよく見せるために鎧もデフォルメして、部分的にガードするにとどめてあります。当然急所を全くガード出来ていないのでこのような鎧に意味は無いのですが、イラストレーションの世界では全然アリです。さらには、とても巨大な剣。こんなものは現実にあってもまず振るえません。最後に、背後のドラゴンもある意味ではトカゲなどのデフォルメと言えますね。

 

 このように、デフォルメはデザインとは切っても切れない関係がございます。そして、この場合に於いて、デザインの特に伝えたい、目立たせたい要素を強調するという役割がデフォルメにはある。

 キャラクターの特徴付けが上手く行かないときには、このデフォルメをそれとなく意識してみるだけでもかなり変わるのではないかなと思います。

 

 今回も肩のこるお話でございました。私自身こちらで記事を書かせて頂くときにはなかなかおっかなびっくりな有り様です。こんなエラそうなことを言っていても、自分はまだまだなわけですし…。とは言え読んでくださっている方がありがたくもいらっしゃるようなので、次回以降も続けて行こうと思います。よろしくお付き合いくださいませ。

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