山田唄のイラストブログ

イラスト描き、山田唄の制作物を載せて行きます

情報量と間引くデザイン

 こんにちは。実は私は十年ほど前に体を壊しており、それ以降一週間のうち一日から二日は十分に休養を摂ることを与儀無くされております。休養を摂っている期間中は、ほぼ食事も水分も取らずひたすら眠るのですが、最近そんな生活を繰り返すせいか益々体力が落ちてきております。今年は体を鍛えて行きたい。

 今回もデザインに関してちょろっと語らせて頂きます。

 

 「上手い絵」という言葉で表せるのは、ごく曖昧な絵の判断の基準になるんじゃないかなと思います。一般的に上手いとされる表現は恐らくは「写実的な」表現になるでしょう。しかし、デフォルメ(単純化)されたコミックアートや抽象画でも上手いとされる絵、イラストはたくさんございます。そこにデザインの話が加わってくるともう基準が分からなくなりますね。

 そこで、絵描き(特にゲーム系のイラストレーター)が絵の上手さの基準として一つ据えているものが、今回お話する「情報量」になると私は思っております。

 

 情報量とは何か。ごく簡単にご説明致しますと、それは画面の中の「描き込みの密度」を指します。下のイラストをご覧ください。

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 これは私が去年の末頃に描いた習作のイラスト。まず絵描きが絵を観るときに真っ先に気を付けるのは「デッサン」が正しいか否かです。そういう意味でこのイラストは大変下手くそなのですが、今回は情報量に限って観て行きます。

 単純に、「描き込まれている部分」と「描き込まれていない部分」に着目してご覧頂くと、周囲の柱のようなものはとてもザツに描かれているのに対し、中央の二人の女性、そして背後の天使のようなモンスターの顔の辺りは特に丁寧に描かれているのがお分かり頂けるかなと思います そして、丁寧であると同時に線や色などを詰め込んである。この詰め込みが情報量の高さであると言えます。

 

 つまり、このイラストでは周囲の柱から中央のメインとなるモチーフに向けて情報量が徐々に高くなっている。よって、観る人の視線は柱の部分から中央へと引き込まれていくことになります。「情報量を操作することで視線を誘導する」というテクニックを使っているわけです。

 このテクニックを裏付けるお話として、写真を考えてみると分かり易いでしょう。普通カメラで撮った写真では、ピントの合っている部分が最も鮮明になり、そこから遠ざかるほどに物体の像はぼやけて分かり辛くなって行きます。要は、ピントの合っている部分が最も高い情報量を持つことになる。今回使ったテクニックはそのまま写真の原理(もっと言えば人間の眼の原理)の応用であるわけです。

 

 基本的に、情報量は高ければ高いほどより多くの刺激を観る人に与えます。情報量を高める=上手い絵を作る、という等式が成り立つ。

 ただし、より上手い絵描き様は、今回私がしたような情報量の操作をより高レベルにこなします。

 

 この情報量の話はキャラクターデザインの場合にも同じように言えると思われます。

 

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 上の立ち絵は、私がデザインしたキャラクターになります。様々な要素を詰め込み、高い情報量を持つデザインになってはいますが、いまいち「どこをメインにしているのか」が分かり辛い。情報量が増えすぎて全体的に詰まってしまっているわけです。

 そこで、全体の情報を整理しつつ目立たせたい部分に加筆して描きなおしたのが下の立ち絵。

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 色数が抑えられ、また余分なパーツも取り払われて、キャラクターのイメージやシルエットがより鮮明になっています。

 ぎゅうぎゅうに押し込められていたキャラクターデザインの情報を「間引いて」分かり易いデザインに変更したわけです。

 

 良いデザインとは、今までしつこく繰り返して来たように「観る人がイイと思うデザイン」になりますが、商業ベースに乗せるにあたってそこに「機能性」が必要になります。実際に使い易いデザインであること、ですね。その条件を満たすためには、あまりにごちゃごちゃとして雑然としたデザインでは難しいと言えます。

 本当に優れたデザインは、極力シンプルである。それでいて観る人が退屈しないように情報量を局所的に高めてあります。デザインで言う情報量は、単に描き込みのレベルだけではなくそのデザインから伝わってくるキャラクターそのものの情報も含みます。上のキャラクターで言えば、胸元や腰回りを強調した女性らしい色気を出すポイントに特に描き込みの密度を高めてある他、剣や帽子、背景などの要素でキャラクターの情報を最低限説明している。

 私のデザインも基本的にまだまだではあるのですが、こうして「間引いたデザイン」が最終的に決定稿になることがデザインの世界ではままあります。逆のパターンとして、イラストとしての完成度や豪華さを重視した「とにかく盛りだくさん」のデザインが通る場合もままあるのですけれどね。

 

 今回は少し複雑なお話でございました。

 デザインと言うものは明確な正解がない分野であるだけに、私もこうした個人の方法論に頼っている所がまだまだございます。こんな方法論でよろしければこれからもお伝えして行こうと思いますので、お付き合い頂ければ幸いです。

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